コーヒーの味を描く

コーヒーの味を描く

コーヒーの豆に合わせたアートワークを描いてほしい――。

そんな依頼をアーティストであるYUMIさんに無茶振りしてみた。

「おもしろそうですね!」
といって彼女は快く引き受けてくれた。コーヒーを実際に飲みながら、二日間ほどで一枚の絵を完成させたらしい。初めてのクライアントワークを経て彼女が感じたこととは。

 

感覚で描くということ

さしいろ今回、当店定番の『暇-itoma-』をモチーフにして新作を描いていただきました。はじめてのクライアントワークだったんですよね。どうでした?

YUMI:「オーダーを受けて絵を描く」ということが初めてだったので、最初は、出来るかな?という不安もありました。でも送っていただいたコーヒーを実際に飲んでみたら、そこからイメージが膨らんだ。”コーヒーの味”という手がかりがあったのがすごくありがたくて、その感覚をたどって描いていった感じです。すごく楽しい作業でした。飲みながら描いてましたね。

さしいろ:コーヒー片手に描いてたんだ!

YUMI:そうですね。飲んだ時に、なんか森のイメージが出てきて。「森の中にある小屋で、暖炉を見ながら温かいコーヒーを飲んで、ふぅと一息ついている」みたいな感覚。そういう安心感とか温もりのある感じ、それをどうキャンバスにのせようか?と試行錯誤しました。

さしいろ:制作のイメージをきいたとき本当すごいなとおもって。
もともとあのコーヒー(※当店のスイーツにあうコーヒー 「暇-itoma-」)は、四日市でケーキや焼き菓子を販売してるCloverさんのスイーツに合わせて作ったものなんです。一緒に間借りカフェをひらいた時に。そのCloverさんが素材にめちゃくちゃこだわっていて、できるだけ体にいいものを使うっていうスタンスですごく優しい味なんですよ。だから激しめのアメリカのドーナツみたいな味に合わせるようなコーヒーじゃなくて、ちょっと優しい甘さのスイーツに合う感じで作っていたので。

YUMI:おお、そうだったんですね。

さしいろ:そういう雰囲気みたいなのをわたしのコーヒーから受け取ってもらえるんだなっていうのがちょっと面白かった。嬉しいです。

 

反対色を重ねる

さしいろ:制作プロセスを教えていただけますか?

YUMI:結構何度も色を重ねて描いてます。まず形のイメージがぱっと出てきたので、下書きして、そこから外側のオレンジ色を塗って。でもなんかちょっと違うな、もっと深い森の中みたいなあの感覚を再現したいなと。

そこで反対色を重ねると深みが出るというのを思い出して、一回緑色で塗りつぶしました。その上にもう一回オレンジを塗り、イエローを乗せて……という感じで色を何度も重ねていきました。

さしいろ:緑を塗ってたの?言われてみればところどころ緑だな。



YUMI:よく見ると、うっすら緑が生きてたりします。あと黄色いおもちみたいなところは、筆をとんとんして細かく色をのせていって。そうすることで、柔らかい、ふわっとしたイメージになったんじゃないかと。ここも色々と試行錯誤しながら、何色かのせてますね。

さしいろ:おもち (笑) 色も質感も、それも全部これだ!って感覚で決めるんですか。

YUMI:うん、そうですね。感覚なので、言葉で説明するのが難しいんですけど。なんか……そう、重ねに重ねて、この感じが出たっていう感じでした。私が感じた”ほっこり”がやっと出た!っていう感じで。

 

初めてのクライアントワーク

さしいろ:クライアントワークとして、「これじゃない」と言われたらどうしようという不安はありましたか?

YUMI:めっちゃ思ってました(笑)
でも、自分がコーヒーを飲んで感じて出したのがこれだったから、描き直すのは難しいかもなって。今回は幸いすぐにOKもらいましたけど、例えば大きい絵を何ヶ月もかけて完成させて、「できました!」ってお見せしてクライアントさんに「違います」って言われても、どうしよう?ってなるだろうなぁとか。

さしいろ:きっとデザイナーとアーティストの違いはそこですね。

YUMI:たしかに、そうかもしれないですね。私の場合、クライアントワークは自由度がないと難しいかも。ほぼお任せしてもらうか、すでに描き上がったものを使ってもらうか。今回みたいに、そういう形が合いそうだなと思いました。

さしいろ:今回はYUMIさんがどういうの描いてくれるんだろうって興味からこの話がはじまってるから、実は何が来てもオッケーでした。この人の感性に任せたらどうなるんだろう?って。多分アーティストに依頼するときはそういうスタンスがいい気がする。


ふたつの振り幅

さしいろ:今回は描き下ろしの「暇」に加えて既存の作品も2点お借りしています。どれも全然違う雰囲気をまとってますよね。振り幅がすごい(笑)

YUMI:実は昨年初めてグループ展に出展した時も、「これ全部同じ人が描いたとは思えない」と何人かに言われたんですよね。シンプルに、私の内側にあるカケラたちをキャンバスに転写したらこうなった、という感じです。

さしいろ:ほうほう。

YUMI:人生でうんと色んな経験をしてきたんですけど、そのストックが入ってる棚みたいなものが自分の中にあって。絵を描き始めたばかりで、その中からこれも出したい、あれも出したい、ってなってるんで作風がカオスなのかなと(笑)

さしいろ:おもしろいですよね。日々にさしいろのコーヒーも振り幅めっちゃあるねって驚かれることが多くて。だからこれはいい組み合わせだなとおもってました。

YUMIコラボの話はほんと、とんとん拍子に進みましたよね。いい流れに乗ってるな〜という感覚でした。初めてのコラボが、日々にさしいろさんで良かったなと思ってます。もう結構お付き合いが長いじゃないですか。3年ぐらいかな?クライアントさんに気に入ってもらえるか…とあまり構えずに、安心感の中で描けたのが一番ありがたかったです。

さしいろ:コーヒーの味もアートも、見方や味わい方はある程度決まってるとこはありながら、実際は受け取り手が感じるものがほんとうに人それぞれというか。そういう受け手の感性に任せるって部分で、アートとコーヒーの共通項みたいなのが捉え直せたのも興味深い発見でした。

YUMI:こちらこそ!”味を絵にする”のは初めてで、すごく楽しかったです。実際に手に取ってくださった方には、絵を見ながら飲んでもらったり、コーヒーの味と絵とを比べてもらうのも面白そうですよね。どんな感覚が湧いてくるのか、みなさんの反応が楽しみです。

さしいろ:これからもYUMIさんの活躍を楽しみにしてます。ありがとうございました。

取材・構成:日々にさしいろ

 


今回ご提供いただいたアートワーク

暇 -itoma-

ほっこり、ゆるゆる、
ふぅーとひと息。

深い森の中にある、小さなお家で。暖炉の火を見ながら、すっかり安心して珈琲を飲んでいる。

珈琲の香りと、薪がパチパチと爆ぜる音。そんな静かな幸せ感を、色と形に写し取りました。

❷エジプトの夜

うんと昔、2000年くらい前。
砂漠でひとり、こんな月を見上げていた。

❸PLAY!!

あそぼう!!楽しもう!!
ワクワクを胸にやってきたこの地球旅行
思いっきり遊び尽くそう

 

YUMI

Artist・魂の調律師
俳優、アイドル、コスプレ写真集クリエイター——「表現すること」一筋に生きてきた20年。その旅を経て昨年、46歳にして絵と出会う。
パフォーマー時代に磨かれた"感覚をアウトプットする力"と、豊富な人生経験が凝縮されたカヲスが作品の魅力になっている。

2027年、初個展開催予定。

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